プリント(紙焼き)写真やアルバムが、本棚の片隅や押入れの段ボールにしまい込まれたままになっているご家庭は多いですね。
おっくうな写真整理も、コツと手順さえ分かれば思ったより手間も時間もかかりません。思い切って実行すると、スペースが広がるだけでなく、自分の人生と向き合う大切なひとときになりますよ。
今回は生前整理の観点から、写真とアルバムの整理と活用法、そして処分法についてお伝えします。
おっくうな写真やアルバム整理、
そのままにすると・・・
ご自分や家族の記録である懐かしい写真。「見返す時間がかかる」「選ぶのが面倒」「処分しづらい」・・・など、写真やアルバムの整理が滞るのには、写真を取り巻く技術の進歩や環境の変化が関係しています。
昭和のフィルムカメラ全盛期、プリント(紙焼き)写真を整理していたのは、立派な表紙の分厚いアルバム。しかし重くてかさばるがため見返す機会も減り、やがて本棚の隅、押し入れの奥へと追いやられていきます。デジタルカメラが普及すると、撮影後はSDカードなどで保管でき家庭内プリントも可能に。また、簡単収納のポケット式アルバムも登場し、あらためて写真を整理する機会は減っていきます。スマートフォン時代になると、写真は従来の記念のためだけでなく、記録や資料用としても気軽に撮られるようになり、撮影枚数が爆発的に増加。劣化の心配もなく大量保管が可能なため、今では、プリントどころか写真整理の必要感もほとんどなくなりました。
このように技術や環境の変化に伴い保管方法が激変したことが、写真整理を複雑にし、結果、面倒で後回しにしたいモノNO.1になってしまったのです。
しかし、遺された家族が遺品整理で一番困るモノのひとつが、この写真とアルバム・・・見返して懐かしむどころか整理する余裕もなく、そのままゴミとして廃棄される例も多く目にしました。とても残念なことです。
アナログ(プリント)保管、
デジタル(データ化)保管、どちらが良いの?
これはよくあるご相談ですが、まずアナログ方式・データ方式、それぞれの特徴をご紹介します。
アナログ方式は従来のアルバム保管に代表され、手書きのコメントなどで温かみが加えられるのが特徴です。デメリットはアルバム本体がかさばり保管に場所をとること、また大きく重いために見て楽しみづらいことのほか、深刻なのは劣化問題。 昭和時代の写真やアルバムは、温度湿度やノリの変質などの保管状態により、すでに変色・貼りつきなど劣化している危険があります。
デジタル方式は、PCや外付けHDD、DVDなどにデータで保管します。かさばらず、劣化せず、変換も簡単、とメリットだらけようですが、一方、中身がわかりづらいため見返しにくいほか、決定的弱点として一瞬にしてデータが消失する危険があるということを知っておかなければなりません。これらを踏まえ、アナログ方式とデジタル方式の弱点を補完しながら写真の整理をしましょう。
「マイベストショットアルバム」を作って活用しよう
写真整理のポイントは次の3点と考えます。
- 物理的にカサを減らせる
- 気軽に見返して楽しめる
- 劣化・消失に備えられる
まず、手持ちのすべてから厳選した写真でアナログ式「マイベストショットアルバム」を作成します。
手のひらサイズのフリーシート式アルバムを使い、「輝いている私」をテーマに誕生から現在 までの写真を各時代から30枚選び抜きます。劣化したプリント写真は、補修依頼する・スキャンして最プリントするなど手当てし、データ写真は使用する写真のみプリントして使います。
アルバムページには、各写真についてのコメントを書きこみます。スクラップブッキング風にシールや吹き出しで飾ると、作るときにも見るときにも楽しめます
できれば最後のページには最近撮ったお気に入りの写真を入れておきましょう。災害時には「捜索用」に、また万一の時には、納得いく「遺影写真」になります。
できあがった「マイベストショットアルバム」は、フォト自分史として遺しても邪魔にならないサイズ感です。普段から見返して楽しめるよういつでも手にとれるところに保管しましょう。
しかしアナログのプリント写真に劣化はつきものなので、この時点で完成したアルバムをスキャンまたは写真に撮ってデータ保存し、バックアップとします。
残された写真の整理・活用・処分法5つ
ベストな30枚を選び出したあとには、まだ大量のプリント・データ写真が残っているはず。
以下の方法から選び、組み合わせて、ご自分なりの写真整理を完成しましょう。
アナログ派は、マイベストショットアルバムには使わなかった2軍の写真を使ってサブアルバムを作ったり、家族・旅行・趣味・作品の写真などテーマ別アルバムを作っても良いでしょう。ただしいずれも、枚数制限は30枚、手のひらサイズより大きくしないことと、コメントを入れることを忘れずに。
デジタル派は、残りすべてあるいは選別したプリント写真をデータ化します。このとき、既存のデータ写真も一緒にしてカテゴリー分けすると良いですね。富士フイルムやカメラのキタムラ等では作業を代行してくれますが、それなりの費用と時間がかかります。自分で作業するなら、FUJITSUのScanSnapなどの機器を使うと効率的。 アナログのマイベストショットアルバムを先に作るのは、作業中の写真データ消失という万一に備えるためでもあります。
データ化した写真は、ひと目で内容がわかりづらく従来のアルバムより見返しにくいもの。そこで、データを再びアナログのフォトブックにまとめてくれるサービス(しまうまプリントなど)が登場し注目されています。安価で手軽なネット注文が可能で、従来のアルバム5㎏分が20分の1の重さになったという方もいます。
また、BUFFALOの「おもいでばこ」は写真整理専用機器。簡単にデータを取り込めて日付順並べ替えもしてくれ、テレビ画面に映して家族で楽しむこともできます。
写真・アルバムを処分する際は、個人の特定を避けるため、アルバム台紙からはがしたプリント写真をちぎって紙袋等に入れてから。できれば一度ではなく、ほかのゴミと混ぜて少しずつ収集に出す、などの方法をとります。 アルバム部分は自治体の定めに沿って分別を。
それでも個人情報管理が気になる方は、①シュレッダーにかける、②溶解処分を業者に頼む、などの対策をとっても良いでしょう。「顔のある写真は、眼の部分をマジックで消してから捨てた」というツワモノもいます。
「とてもそのままゴミになどできない」という方は、まず「お清め」を試してください。処分予定の写真・アルバムを白い袋や布などで覆い、塩をふって一晩清めてから処分します。
それが無理な方は、「供養」しましょう。神社やお寺などで行われる「お焚きあげ」に持ち込むのです。日程が合わない・ご自分では運べないなどの事情がある場合は、お焚きあげ代行サービスもあります。専用段ボールに詰めて送るだけなので、人形や手紙、遺品など思いがこもったモノを手放すときにも役立ちますね。個別相談窓口でもご案内していますので、お問い合わせください。
写真整理の時間は人生振り返りの時間。歩んできた道すじをたどると、それだけで幸せを感じますね。 すでに昭和のフィルム時代のアルバムは傷んでいます。大切な写真を失う前にまずは一か所に集めて点検してみてください。
思い出をよみがえらせてくれるマイベストショットアルバム作りは、記憶の確かなうち、生前整理の第一歩としてぜひお勧めします。
本コラムでは、「生前整理の基本 - モノの片づけ・心の整理・情報の伝達」について、順を追って詳しく解説していきます
「生前整理」は「モノ・心・情報を整理」して、あしたの道すじを照らすこと。ひとりでも多くの方が新しい目標をもって幸せに生ききることができますよう、と願いつつ
~本コラムの筆者プロフィール~
村上 充恵氏
ル・リアン横浜代表。生前整理コンシェルジュ。神奈川大学EXT講座講師。セミナー、相談会などを通じて生前整理メソッドをわかりやすく伝える活動をしている。生前整理普及協会アドバイザー認定指導員、ファインシャルプランナー2級技能士。