~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
1人1台ずつモニターを持つ時代
リビングのシアター化構想は立ち消えに
リビングのテレビ台にどっしりと鎮座するプラズマテレビは、現在28歳の長男が小学生の時に買った年代モノ。壊れたら、次はもっと大画面で軽い液晶テレビに買い換えて、壁掛けか、スタイリッシュなテレビスタンドに掛けるか、などと計画していた。天井にスピーカーを埋め込んであるから、家族でソファに並んで大音量で映画を楽しむこともできる。ただ、17年間フル稼働するこのプラズマテレビが、壊れる気配を見せないのだ。
テレビを見なくなった息子たち
さすが国産ブランド、などと感心しているうちに、夫や長男が在宅ワーク中心になったり、次男も研究室のオンラインミーティングがあったりと、住まいと職場と学校が混在する環境になり、吹き抜けのあるリビングで大音量を鳴らすことは非現実的になった。長男が独立した後も、夫はリビングで仕事をしていてオンライン会議も多いから、私は寝室に(嬉々として)こもることが増え、リビングのテレビは夫、寝室のテレビは私、と棲み分けるようになった。そもそも韓国ドラマ好きな私と、スポーツ観戦一択の夫では、画面を共有する機会がない。
夫は仕事中も消音でメジャーリーグの試合を毎日流していたりする。息子たちはというと、中高生のころから全くテレビを見なくなった。小学生まではアニメを見たり、お笑い番組を見たりもしたが、今ではそれぞれのスマホやタブレットでSNSや動画やサブスクを見ている。それに息子たちの部屋には、卓上のモニターがある。なんだ、みんなバラバラにモニターを見ている家族じゃないか。リビングの大画面テレビの需要はダダ下がりだ。
親子で同じ映画を見ることもなくなって、寂しい限り。そう思っていたら最近、「部活で予定が立たないけど、ライブに行ってみたい。なんかチケット取ってよ」と三男。そういえば、ママ友が大学生や社会人の息子と一緒にライブに行った自慢話は度々耳にしていた。良い機会かもと思い、張り切ってチケットを取った。三男の初ライブ体験はとっておきのアーティストの来日公演に一緒に行こう。あとは部活の急なミーティングが入りませんように、と祈るばかり。
~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。長男独立後は社会人1年目の次男、大学1年生の三男と夫の4人世帯に加え91歳の母と二世帯同居している。