~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
七五三以来のスタジオ写真が増えた春
多忙な桜の季節は今年で最後になるのか
「はーい、目線こっちにください!」。セピア調のバックスクリーンの前で、卒業証書を手にして立つ次男。スーツの上に着たアカデミックガウンと、房の垂れた角帽が初々しい。続いて両親も背後に立って撮影。大学院の学位記授与式(修士終了)の当日、キャンパス内で行われた撮影会だ。
プロによる記念写真を撮るのは、三人息子それぞれ5歳で撮った七五三以来。女の子のように晴れ着を着ることもないし、立派な台紙に収まった写真を息子たちが見返すこともない。長男は新居が狭いからと、アルバム類を全部実家に置いていった。次男の記念写真を撮りながら、「これは親のためのものだなぁ」としみじみ思う。子育てとしての次男の式典もこれで最後だ。
記念写真は老後の楽しみに
前日は三男の高校卒業式だった。私が係を務める謝恩会もあったため、朝から晩まで緊張感の途切れない1日だった。1年前から準備をしてきたので、無事に会を終えて先生方をお見送りしたときは、安堵感から脱力気味に。小学校のPTAからサッカーママまで、親の係もあれこれやったが、今回の謝恩会係で最後になるはずだ。
3日空けて長男のウェディングフォト。雨続きの年度末の中で、ありがたいことにこの日だけは快晴だった。遠方から嫁の親族も来て、両家揃っての集合写真を青空の下でプロカメラマンが撮影。挙式も披露宴もやらないと決めた2人には、この日が結婚式代わりだ。着たかったデザインのウェディングドレス姿の嫁は、キラキラまぶしい笑顔を見せていた。
セレモニーウィークの締めは4月頭、三男の大学入学式。次男の入社式でもあるこの日は再び強雨。大学の校舎前で傘を差しながらの記念撮影は、混雑しすぎて誰が被写体かわからないような写真になった。
こうして新年度が開幕した。三人息子それぞれ節目の行事を迎えられたことに感謝! この1週間で急増した記念写真は、母の老後の楽しみにするよ。そう思いながら、仕事とはまた違った“ちゃんとしなきゃ”感の連続と、慣れないストッキング&パンプス&真珠ネックレスの毎日に疲れはマックス。ベッドにダイブして、「終わったー! 疲れたー‼」と叫ぶ母なのだった。
~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。長男独立後は社会人1年目の次男、大学1年生の三男と夫の4人世帯に加え91歳の母と二世帯同居している。