~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
20年も使えば劣化は当然という
予想を裏切るのが天然木の家具と床
「今度はこっちか!」。新築から20年経ち、住設や家電は次々壊れて修理・交換を余儀なくされる。どれに買い換えたら正解なのか、新しい機能はどう使うのか、そんなテクノストレスで消耗する日々のなかで、癒しになっているのが天然木の製品だ。
20年前、目黒通り沿いにあった倉庫型の家具店で、一目ぼれして買ったのが長辺220cmある大きなダイニングテーブル。確かオーク素材のオイル仕上げで、納品に来てくれたお兄さんが、「たまには紙ヤスリをかけてワックスを塗ってあげてくださいね」と言っていたのは記憶にある。
お食い初めから成人までこの食卓で
当時は7歳と3歳の息子がいて、その後もう1人増えて、お食い初めもこのテーブルでやったし、頭ごっつん対策のコーナーガードを貼ったり外したりを経て、ベビー椅子・キッズ椅子が全て大人椅子に替わってすでに何年も経つ。毎日布巾で水拭きされ、塗り絵のクレヨンや宿題の鉛筆の跡が写り、何かのラベルがくっつき、輪染みも消えなくなり、色ムラも変色も仕方ないかと、ここ数年は手をかけていなかった。
それが突然、紙ヤスリとビーズワックスを買ってちゃんとお手入れしようと思い立ったのは、たまたまSNSで流れてきた「オイル仕上げの家具のお手入れ」動画を目にしたからだ。見本として使われていたのが、うちのとそっくりなオークのテーブルだった。脂が抜けて白っぽくなってくるとヒビ割れすることも、と言っていた。それはかわいそうすぎる。
使うべき紙ヤスリの粗さが特定できたので、ビーズワックスと共にオンライン購入。届いたらすぐに動画通りお手入れした。何年も塗っていなかったからワックスはたっぷり重ね塗り。見る間につやつやの質感を取り戻していく。白っぽく変色していたあたりも本来の色を取り戻した。天然木の木目はなんて美しいんだろう。出会った時の恋心を一瞬にして思い出した。そのうちメープルの床もやってあげないと。面積大きいけど。
お手入れのきっかけは動画を目にしたことだが、その前段階のきっかけは、お手入れの翌日に長男が彼女を家に連れてくることだった。ついにその日が来た。
その模様はまた後日。
~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。大手出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。社会人、大学院生、高校生の3人息子と夫の5人世帯に加え90歳の母と二世帯同居している。