相続財産、特に不動産は現在、いつまでに名義変更をしなければならないという期限はありません。そのため、名義人がお亡くなりになってから数十年以上放置された不動産も度々見られます。
当記事では、そのように名義変更をしなかった場合のデメリットなどを解説していきます。あの時、名義変更を怠ったばかりに・・・ということにならないように、早めに手続きを済ませたいですね。
相続財産の名義変更ってどんなものがあるの?
誰がどの財産を相続するか決定したら、次はそれぞれの財産の名義変更をする必要があります。下記では代表的な名義変更のポイントをお伝えします。
1.不動産の名義変更
相続が起こった場合、被相続人名義の不動産を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりませんが、名義変更をしないで後にトラブルになることがよくあります。速やかに名義変更を行いましょう。手順は下記の通りです。
2.預貯金の名義変更
一部の相続人が預貯金を勝手に引き出すことを防止するために、銀行などの金融機関が被相続人の死亡を確認すると預貯金の支払いが凍結されます。凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。
3.株式の名義変更
上場株式は、被相続人の証券口座がある証券会社等を通じて名義変更の手続きをすることになります。未上場株式は、その会社に直接名義変更の手続きをすることになります。
4.その他の財産
名義変更をしないデメリットとは
名義変更の中でも最も重要なのは、不動産の名義変更(相続登記)です。この手続きを怠たると、その土地や財産の所有権を主張することができません。つまり法律的に、自分の所有物とは認められないのです。
しかし現在、この登記手続きには明確な期限が定まっていないために、下記のようなケースが多発しています。
① 死亡した人が遠方に土地を保有していたが相続人では発見できず、名義変更を怠ったケース
このまま放置すると、時の経過とともに、相続人が更に死亡したりして、相続人がどんどん増えていき、遺産分割がスムーズにいかなくなってしまいます。
② 相続登記をすると莫大な相続税が発生すると思っているケース
相続税が発生する相続案件は全体の10%に満たないのが現状です。ですから、安心して相続財産の名義変更をお済ませ下さい。
③ 権利証を紛失したため、登記ができないと思っているケース
不動産を所有している方は、権利証(もしくは登記識別情報)をもっておられると思います。一般的に知られていませんが、相続登記は権利証がなくてもすることができます。そして、新たに所有者となられた方(相続人)に登記識別情報が発行されます。
相続登記がついに義務化!いつから?
現在、相続登記は義務ではないため、いつまでに申請しなければならないという期限はありません。そのため、長期間に亘り相続登記されないことも多く、相続関係が複雑になったり所有者が分からなくなったりという問題が起きていました。2017年には、所有者不明の土地面積が九州全土の面積を軽く超えているという衝撃的なデータが発表されています。
この問題を解消するため、不動産登記法が改正され、相続登記を期限内に必ずしなければいけないことになりました。2024年を目処に施行される見通しです。
以下は今回の改正におけるポイントの一部です。
「そういえば前に一度、父から聞かされた土地があったな・・・」など、実は自分に関係のあった不動産が見つかった場合、その他の名義人に連絡を取って、協議の上で相続登記をするというのはなかなか骨の折れる作業です。
時間とともに相続人は増え、どんどん複雑になってしまいますので、早めに専門家に依頼しておくとよいでしょう。
監修
トラスティ藤沢司法事務所
代表司法書士
山脇 和実
(神奈川県司法書士会 登録番号1842)
宮川めぐみ税理士事務所
代表税理士
宮川 めぐみ
(東京地方税理士会 登録番号113089)