~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
いろいろ共通点の多い2家族
父同士の盛り上がりで距離が縮まる
話は長男結婚の少し前に遡る。その日、両家顔合わせの食事会というものが開催された。息子と彼女で全て準備したので、我々夫婦は「この日あけといてね」と言われた日時に足を運ぶだけだった。
会食の個室に入ると、卓上に飾られた一輪挿しの胡蝶蘭の横に、手作りのプログラムらしきものが置かれている。あいさつ文に始まり、2人の馴れ初めやプロフィル紹介、両家の家族紹介がコンパクトにまとめられた3つ折りの紙。手触りが良く、プリンターより美しいマットな仕上がりだなと思ったら、自分たちで印刷に出したそうだ。それを手に取った時点で、両家の共通点の多さに気づき、2人が不思議な縁で結ばれているのを感じた。
父同士は同級生にあたる年齢
例えばこの少子化の時代に、息子も彼女も年の離れた3人きょうだいで、末っ子はまだ高校生ということ。きょうだいの年周りもよく似ていた。スポーツ観戦好きの父同士は同学年の生まれで、母同士も年齢と誕生日が近く、第3子を40代で出産したところも共通している。仕事をしながら3人の子育てをして、朝のお弁当作りがようやく終わるタイミングを迎えるところも一緒だった。
食事を始める前に、「始まりの挨拶」をきちんと語ったのは彼女。父たちは初対面ながら、日米の野球やサッカーの話題で大いに盛り上がり、乾杯だけのはずだったビールは次々に追加された。終盤には記念品として縁起物の地酒をいただいたり、地元の銘菓を交換したり。会の「結びの挨拶」は息子の出番のはずだったが、時間切れでフェイドアウトしたのも彼らしい。
両家の共通項はほかにもあった。顔合わせに向かう道中で、「調子に乗って余計なこと言わないでよ」と、父が母から釘を刺されていたところ。先方は妻より娘に刺された釘のほうが太かった模様だ。話題を提供するたびに妻や娘の顔色を見ていた父たちも、会の終わりには自然体で打ち解けていた。料理はおいしく、みんな笑顔だった。この日を境に、先方のお嬢さんは「彼女」から「嫁」に呼称が変わり、新しい“家と家族の物語”が始まる。
~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。長男独立後は社会人1年目の次男、大学1年生の三男と夫の4人世帯に加え90歳の母と二世帯同居している。