~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
我が家の隣駅に新居を構えた長男夫妻
家賃が高くて狭すぎる部屋に2人と1匹
28年近く実家住まいだった長男が結婚して家を出た。新居は1駅隣で、自転車なら15分で行ける距離。彼女は元保護猫のラムさんを連れてきて、2人と1匹の新生活が始まる。ペット可の物件は希少らしく、そうでなくても人気物件は争奪戦で、賃貸探しは難航した。そうして2人は、駅からまあまあ遠くて、北向きで、想定よりちょっと狭い部屋で新婚生活をスタートさせた。
2人ともリモートワーク中心だから在宅時間はとても長い。遠距離で交際した時間を埋めて余りあるギューギューな密度かもしれない。猫のラムさんは慣れない新居に怯えて物陰に隠れっぱなしらしい。何もかもがフレッシュな、若い2人の前途はキラキラ輝いてみえる。
不動産(広告)好きの母としては、「こんなに家賃を払うなら、ローンを組んで家を買ってしまえばいいのに」と思ったりもするが、年々高騰する東京の不動産事情はそれすら許さないレベル。次の更新までの2年間に、買えるところが見つかればいいなと、息子も考えてはいるようだ。
4人家族って効率がいい
一方で長男が出た後、3LDKの我が家は、次男三男が1部屋ずつ使えるようになった。4月から次男は社会人、三男は大学生。三男は高校サッカーを引退して大学の部活を始めるまで、ひとときの自由時間を自室で満喫している。今までは同室の長男がリモートワークしていたから、押し出されてリビングで過ごすことも多かった。ベッドもジュニアサイズからシングルベッドに格上げされ、丸まって眠る姿を見ることもなくなった。
気づけば世の中、4人家族に効率よくできている。食品を買うにも無駄がない。切り身なら2尾入りを2つ。外食でも4人席は5人席より順番が早く来る。旅行ならツイン2つはありだが、3人1室不可とされることが何度もあった。効率的と感じる機会は増えたが、やっぱり何か物足りない。すぐに慣れるよ、とママ友には言われるし、たぶん慣れるんだろう。早く慣れないと、次の巣立ちに耐性ができないし。
~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。長男独立後は大学院生の次男、高校生の三男と夫の4人世帯に加え90歳の母と二世帯同居している。