~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
家の評価額が爆上がりして得した気分も
払う保険料が高くなるだけのことだった
新築時に加入した火災(地震)保険を5年ごとに更新してきて、20年経ったので満期になった。保険請求したことはないし、満期返礼金などもちろんない。同じ保険会社で契約するか変えるのか、検討してくださいと、郵送でお知らせが来た。
「もう築20年なんだから保険辞めちゃえば」と夫。そうしたいけど、有事に再建できないのはつらい。新築時は銀行や不動産会社がなんでも教えてくれてラクだったなと思い返しながら、自力でオンライン見積もりに挑戦した。
削った部分に限って何か起きそう
建物の広さや構造など条件を入力してGO!「なんと、うちの建物の評価額が、新築時の2倍ぐらいに跳ね上がってる!」。すごく得した気分になったのも束の間、そういうことでは全くないと気づく私。すべての建材や設備が値上がりしているから、今と同じような建物を新築で再現するには、20年前の倍のコストがかかる、というだけだ。それに合わせて保険料も爆上がりしている。
わからないことだらけで、保険会社に電話して尋ねると、保険料を抑える施策は聞くことができた。要は、建物の評価額を下げて、台風や浸水を対象外にするなど補償範囲を狭めて、家財道具も外して、多様な特約を外して総額を下げる。ただし延床面積から算出される評価額には下限があるから、それ以上は下げられない。
で、“全部乗せ”的な最初の見積もりと、過去の保険料の間を取った形で、手を打った。とはいえ5年で数十万円。クレジットカード番号を入力して、私はロボットではありませんにチェック入れて、緊張しながらGO!5年後10年後の更新でもチャチャッとGO!できるのか、自信がない。
コストダウンのために補償範囲を狭めたり特約を外したりするうちに、「そもそもなんのためだっけ?」と迷い始めるのは、海外旅行保険や自動車保険のオンライン申し込みでも経験済み。削った部分に限って災厄に見舞われる気がする私は、自分で保険を組み立てるのに向かないタイプに違いない。

~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。大手出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。社会人、大学院生、高校生の3人息子と夫の5人世帯に加え89歳の母と二世帯同居している。