息子の帰国②

2025.5.8

交通ストを前に2日早めて帰国
口開けたスーツケースが居間を占拠

留学中、次男の部屋を三男が使っていた。三男は再び、長男と一緒の部屋に戻る。三男が修学旅行に出かけたら、2日後に帰国する次男と三男の寝具を洗濯してベッドメイクし、部屋をきれいに掃除しよう。
そんな、パズルのような家事を計画していたにもかかわらず、次男が急きょ2日前倒しで帰国することになった。ギリシャの交通ストで飛行機が終日欠航になる見込みで、ビザ切れ前に帰れる便をなんとか確保したそうだ。東京行きはとれず、関西空港に夜着いて新幹線で帰ってくるという。

次男の痕跡がいたるところに

深夜に無事帰宅した時は、本人も家族もホッと安堵した。重たいスーツケースを2個、1階玄関から2階リビングまで階段で運んだところで次男は力尽きた。スーツケースのフタを開けたらリビングは足の踏み場もなく、その先の荷ほどきは何日たっても進まない。優しい家族たちは誰も文句を言わず、それをまたぎながら生活している。
そうだった、この感じ。次男が帰って来た!…リビングに広げられたスーツケース2個からじわり実感が迫る。その荷物をまさぐり、お菓子や紅茶など友人たちへの土産品をつかむと、夜ごと誰かに会いに出かけていく。次男が使った後の洗面台に行けば、収納扉は開いたまま。そうだった。洗った洋服は階段の手すりにかけたまま。そうそう。あちこちに彼のマーキングがよみがえっている。
そしてついに、しびれを切らした私が2個のスーツケースを片付けた。中にある土産品のグミやクッキー、紅茶や化粧品が、床暖房でスーツケースごと温められて、ホカホカになっているのに気づいたからだ。
一緒に留学から帰り、1人暮らしの家に戻った清潔好きのルームメイトは今頃、次男のマーキング地獄から解放されて心底ほっとしているに違いない。

息子の帰国②