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不動産広告大好き

2023.1.12

賃貸のように家を買い替えた母 
決め手はモテ物件かどうか

緑あふれる素敵な開発街区で、素敵なパパに見守られる娘の未来には輝きしかない。昔も今も不動産広告に描かれる家族像は憧れの象徴だ。
中学生の頃から不動産広告を見るのが好きだった。土曜の新聞折り込みを1枚ずつ広げてシミュレーションする。洋風の素敵な家で暮らせば素敵なライフが輝き始める、そう信じられたから広告効果は抜群だった。

不動産広告で魅力的に映る家

現実は少なめの給与所得で暮らす母子家庭の娘だったからそう甘くはないのだが、飽き性の母は2、3年ごとに家を買い替えた。団地を売ってマンションへ、買い替えて戸建へ、またマンションへと。新築マンションに3年住んだ後、倍近い値段で買い手がついた経験もした。今思い出しても、賃貸を移るように買い替えていた母の即決ぶりにドキドキする。そういう右肩上がりな時代だったことと、もう1つは、母の直感はわりと的を得ていた。自分が一目惚れした物件はきっと他の人も欲しくなる、いわばモテ物件。そんな胸算用を無意識のうちにしていたのだろう。不動産広告にどう掲載されてどこが魅力になるか、母には見えていたのかもしれない。
買った値段より高く売れる時代はバブル崩壊と共に終わった。その頃には母も歳をとり、娘も社会人になり、広告からの妄想は卒業していた。結婚した私は自分たちなりの視点で新築戸建を買い、5年後に売りに出したらなかなか買い手がつかず、ぐっと値引きして売った。買い値も売り値も相場だったと思う。だが同時期に母が買っていた家は、5年後に新築時とほぼ同価格で、広告に出した翌日に売れた。やはりそのセンスにはかなわない。
こうして母子それぞれの家2軒を売って土地を買い、二世帯住宅を建てた。それが今の住まいだ。1階1LDKに母1人、2階3階の3LDKに親子5人。予想外に長く、17年もここで暮らしている。

不動産広告で魅力的に映る家

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