~家の記憶エッセイ~ 住まいと棲み家とお宅とアジト
住まいにまつわるショートストーリーをお届けします。
日々の、日常の、住まいと家族のこと。
朝のコーヒーを飲みながら、通勤電車の中で、煮物が煮あがる待ち時間、就寝前に。
インテリアやインタビュー記事を執筆しているフリーライターによるコラムです。
新築時の工務店に決めた理由は
長年のやりとりで納得していたから
築19年で外壁と屋根のリフォームを依頼したのは、私と同世代の2代目社長が切り盛りする個人の工務店。新築時の施工に課題がなかったわけではない。むしろ思い出すと冷や汗が噴き出すぐらい色々あった。入居して初めての夏には、エアコンのスイッチを入れたら水が噴き出して大騒ぎになった。排水ホースの始末が完了してなかったのだ。吹き抜けの壁に雨染みが出たときは、遥か手の届かない位置にある窓がわずかに開いたまま引き渡されたのが原因だった。そういう粗相はたくさんあった。
持続可能な関係をもてるか
でもそうなった理由がわからないものや、不信感を抱き続けるトラブルはなかったし、私が無理難題を言っても誠実に対応してくれた。新築時は他の外注業者との調整役も担ってもらった。この個別発注で、手間暇やストレスはかなりかかったけど、私自身も家づくりへの理解が深まった。何が交換出来てどんな選択肢があるのかなど、長年住むうえでの家との付き合い方が知識として残ったように思う。丸ごとお任せしていたら得ることはなかったはずだ。
今回のリフォーム工事は結果的に3社から提案いただいた。2社の立派なリフォーム提案書と、1社の紙2枚だけの見積書の総額には1.5倍ほど開きがあった。塗料の質をざっくり調べた以外は正直、何の差かよくわからなかったし、2社は「高めに見積もったけど値引き交渉の余地あり」という様相だった。
若い頃なら安さか大手の安心感かの2択で選んでいたと思う。今は自分も歳をとったせいか、その担当者と持続可能な関係を持てるかどうかに左右される。とはいえ次の20年が過ぎる頃には、社長も現役ではないだろう。この家の主も変わっているかもしれない。それでも好きな街の風景の一部として、出来る限りきれいな家としてここに存在してほしいと願う。

~本コラムの筆者プロフィール~
葉山 郁子 (はやま・いくこ)
ライター。小学生時代に4回転校するなど引っ越し好きの母と首都圏を転々とした後、神奈川県寄りの都内に定住。大手出版社で複数の編集部と雑誌創刊を経験。現在はフリーでエンタテインメント分野の記事を中心に執筆。社会人、大学院生、高校生の3人息子と夫の5人世帯に加え88歳の母と二世帯同居している。